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渡り蝶と渡り人・・・おりおりの短歌
四季折々の短歌を示します。
短歌「桜の世界」8首中1番目
 透明な風の触手は

      花びらをもてあそびては空に連れ出す

 

 「桜の世界」の最初の一首。
 「風の世界」の第8首の解説では、風のさまざまな性質について述べた。
 http://tamahibiki21.blog70.fc2.com/blog-entry-17.html
 ここでは「自分自身が風となり」、
 「その風が意志を持って枝先の花びらと戯れ、
 大空に一緒に連れ出したいという願望を表している」
    「地表」(2009年6月号収載)
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■以下には本ブログの短歌をテーマ毎にまとめてあります:SRS研究所の短歌の頁
■SRS研究所のHPは以下:SRS速読法・能力開発法
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短歌「風の世界」8首中8番目
羽を得て天空高く駆け上り
 
     風の大群切り返したし
   

 風の世界の最後の一首。
 風は動くものであり、動かすものであり、
 流れるものであり、流すものであり、
 吹くものであり、風化するものでもあり、
 木の葉や花粉や砂塵を運ぶ存在でもある。
 そんな風を観照するだけでなく、
 風と同等の存在になって、
 風と戯れたいという願望の現れである。
    「地表」(2009年7月号収載)
短歌「風の世界」8首中6番目
 孔雀蝶は無心に翅を開閉し

       蜜を吸ひつつ風と戯る


 クジャクチョウはタテハチョウ科の蝶。
 翅を閉じると翅裏が見え、これはほぼ黒い色。
 翅を開くと鮮やかな赤を基調とする翅色が見える。
 孔雀という名前はこの翅表の模様から来る。
 SRSの3D昆虫園の写真を参照:
 http://www.srs21.com/3d_insect/pages/009_kujakuchou.htm
 http://www.srs21.com/3d_insect/pages/079-insect-kujakuchou.htm
 上段は、アザミで吸蜜中。下段はラベンダーで吸蜜中。
 吸蜜中に翅を開閉するのは、落ち着いていないのではなく、
 翅を動かすことで、蜜の吸引力を高める動作なのだろうと思う。
 風の中で無心に吸蜜しながら揺れているクジャクチョウは、
 自然の美しさを教えてくれる。  
    「地表」(2009年7月号収載)
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短歌「風の世界」8首中5番目
緑蔭に一人たたずみ

      さやさやと耳朶打つ風のささやきを聴く
 

 ある夏の日のこと。
 木陰に座ってしばらくたたずんでいると、
 樹間を涼やかな風が抜けていった。
 その風が耳朶(じだ。みみたぶのこと)にやさしく当たる音が、
 その森の目に見えない物語を教えてくれるように感じられた。 
    「地表」(2009年7月号収載)
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短歌「風の世界」8首中4番目
 山里の風に揺れつつ
 
        夕闇に薫りを放つ吸葛(すゐかずら)あり



 吸葛(すゐかずら)=スイカズラは常緑のつる性の野生の低木。
 筒状で唇状の花弁を持ち、5月から7月頃に黄色い花を開く。
 花色は白から次第に黄味が増す。
 香りが高いのが特徴だ。
 路傍の草むらに混じって、
 夕方の風に揺られて高い薫りを発するスイカズラに接すると、
 しばらくその場にたたずんでその雰囲気を静かに味わう気持ちになる。 
    「地表」(2009年7月号収載)
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